事故を起こしたら最初にすべきこと 5 ステップ|警察・保険・示談の完全ガイド

事故を起こした直後の 5 分間の対応で、その後の賠償額・保険適用・行政処分が大きく変わります。安全確保・救急要請(119)→警察通報(110、道交法 72 条)→情報収集→保険会社連絡→治療・示談の 5 ステップと、その場で謝罪しない理由・ドラレコ映像の保全・弁護士費用特約の使い方まで、慌てないための完全ガイドを法令準拠でまとめました。
0. まず全体像:事故発生から治療・示談までの 5 ステップフロー
パニック状態でも辿れるよう、対応の全体像を先に示します。この 1 枚を頭に入れておけば、以降の詳細を忘れても最低限の行動は取れます。
【事故発生】
│
├─ STEP 1. 安全確保 & 救急要請(119)
│ └─ エンジン停止 → ハザード → 負傷者救護(119)
│ → 安全な場所へ避難 → 停止表示器材
│
├─ STEP 2. 警察への通報(110) 【道交法第 72 条の義務】
│ └─ 直ちに報告(人身・物損問わず)
│ / その場での謝罪・口頭示談は厳禁
│
├─ STEP 3. 情報収集 & ドラレコ証拠保全
│ └─ 免許証・ナンバー・現場写真撮影
│ / ドラレコ SD カードの即時保護(上書き防止)
│
├─ STEP 4. 保険会社へ事故連絡
│ └─ 当日中に事故連絡
│ / 事実を正確・正直に報告
│
└─ STEP 5. 治療 & 示談交渉
└─ すぐに病院(整形外科)受診 → 通院記録保存
→ 弁護士費用特約の活用検討上から順に実行するだけです。負傷者がいる場合は 119(救急)を 110(警察)より先に、そして「示談・謝罪の禁止」だけは絶対に忘れないでください。
1. STEP 1:事故直後の 60 秒でまずやること(安全確保・救急要請)
事故を起こした瞬間、ほとんどの人は頭が真っ白になります。しかし、その直後の 1 分間で行動できるかどうかが、二次事故を防ぎ、後の交渉を有利に進める分かれ道です。
まずは以下の 5 つを、この順番で機械的に実行してください。特に負傷者がいる可能性がある場合、救急要請(119)は 110 番より優先します。
- エンジンを止める — 燃料漏れや電装系ショートによる火災リスクを下げる
- ハザードランプを点灯 — 後続車に「異常あり」を伝える
- 自分・同乗者・相手の意識と負傷を確認 → 必要なら 119(救急要請) — 大声で呼びかけて反応があるか、目を開けているか、まっすぐ立てるかを確認。 意識がない・返事がない・大量出血・強い痛みを訴えるのいずれかがあれば、迷わず 119 番。判断に迷う場合は救急相談センター #7119 を活用してください(「明らかな軽症以外はまず 119」が原則)。負傷者をむやみに動かさないことが原則で、火災など明白な二次危険がない限り、その場で救助を待ちます
- 動ける全員で安全な場所へ移動 — 自走できるなら車を路肩へ、無理なら人だけでもガードレール外側へ避難
- 三角表示板・停止表示灯(発煙筒)を設置 — 高速道路上でやむを得ず停止する場合、後方に停止表示器材を設置することが道路交通法上の義務です(道交法第 75 条の 11)。後方のドライバーから見えやすい位置(後方 50 m 以上手前が目安)に置きますが、交通量が多く危険な場合は安全確保を最優先し、無理な設置は行わず、即座に全員でガードレールの外側等へ避難してください
事故直後は感情が高ぶり、相手を責めたり大声を出したりしがちです。しかし、この段階で言った言葉は後々証拠として残ります。まず深呼吸を 3 回してから相手に近づくのが正解です。
2. STEP 2:【道交法第 72 条】警察への通報は法律で義務
「小さな事故だから警察を呼ばずに済ませたい」というのは、非常に危険な判断です。人身・物損を問わず、警察への通報は道路交通法第 72 条で義務化されています。

通報しないとどうなるか
- 報告義務違反 → 3 か月以下の拘禁刑または 5 万円以下の罰金(道交法第 119 条)
- 交通事故証明書が発行されない → 自動車安全運転センターは警察の届出記録に基づいて事故証明を出すため、届出そのものがないと事故証明が出せず、任意保険金の請求ができなくなる
- 後日「当て逃げ」扱いになるリスク → 相手が痛みを訴えて人身事故に切り替わると、逃走扱いで違反点数と罰則が加算される
通報時に伝えること
以下を落ち着いて伝えます。パニックでも次のテンプレをそのまま読めば OK です。
- 「事故を起こしました。場所は◯◯付近です」
- 「けが人は(いる/いない)、車両は(自走可/自走不可)です」
- 「相手の方は(意識あり/意識なし/救急要請済み)です」
警察官が到着すると 実況見分 が行われます。この記録が後の過失割合認定の重要な根拠になるため、絶対に立ち会って、事実を正確に伝えてください。
3. STEP 3-①:相手・現場情報の収集チェックリスト
警察と保険会社を待つ間に、以下の情報をスマホで記録します。抜けがあると後の交渉で不利になります。
| # | 収集する情報 | 記録方法 |
|---|---|---|
| 1 | 相手の氏名・住所・電話番号 | 運転免許証を撮影(相手の同意を得る) |
| 2 | 相手の車のナンバー | 前後ナンバープレートを撮影 |
| 3 | 相手の任意保険会社名・証券番号 | 保険証券 or ステッカーを撮影 |
| 4 | 事故現場の全景 | 4 方向から撮影(信号・標識も含める) |
| 5 | 破損箇所のアップ | 双方の車両を近距離撮影 |
| 6 | ブレーキ痕・散乱物 | 消える前に必ず撮影 |
| 7 | 目撃者の連絡先 | 名前と電話番号を控える(協力を得られた場合のみ) |
| 8 | 事故発生時刻・天候 | メモ or 音声メモに記録 |
写真は「引き」と「寄り」の両方を残すのがコツです。全景で位置関係を、寄りで破損の程度を示すことで、後の過失割合交渉が具体的な証拠に基づいて進みます。
4. STEP 3-②:ドライブレコーダー映像の証拠保全【上書き消去に要注意】
ドライブレコーダーは、事故対応において「もう一つの目撃者」です。しかし、初期設定のままだと 数時間〜数日で自動的に上書き されてしまい、事故映像が消えるトラブルが後を絶ちません。

事故直後に必ずやること
- エンジン停止直後(または車両停止直後)に、その日の映像を「保護」する操作を実行(機種によって「ロック」「保存」「イベントボタン長押し」「衝撃検知の手動起動」など呼び方が異なる)
- microSD カードを本体から即座に抜き取って別途保管(バッテリー再接続時や 12 V ラインの再通電での書き換えを完全に防ぐ)
- その場でスマホでバックアップを二重化 — カードが後で読み込みエラーになるケースが実在するため、以下のいずれかを実施:
- ドラレコ本体の液晶画面に流れる再生映像を、自分のスマホの動画機能で直接撮影する(最も簡単で確実。カード破損時のバックアップとして機能)
- スマホの microSD リーダーで直接ファイルコピー(iPhone は Lightning/USB-C 対応リーダーが必要)
- 相手側にドラレコがあれば、映像提供を依頼 — 拒否される場合もあるが、警察経由で任意提出を求めることは可能
映像が果たす役割
- 過失割合の交渉で「客観的事実」として決定的な根拠になる
- 相手が「信号は青だった」と虚偽の主張をした場合の反証材料になる
- 保険会社の初動査定で映像を提出すると、示談の交渉スピードが 2〜3 倍速くなる
5. STEP 4:保険会社への連絡タイミングと伝え方
警察の初期対応が終わったら、その日のうちに 自分の任意保険会社の事故受付センターに連絡します(24 時間対応が一般的)。
連絡が遅れると起きること
- 保険会社の初動対応が遅れ、示談代行の効果が半減
- 事故現場での保険会社スタッフによる立会が受けられない場合あり
- 事故報告の遅延を理由に保険金が減額される契約もある(約款要確認)
連絡時に伝える基本項目
- 事故発生日時・場所
- 相手の車両情報と保険会社
- 警察への通報有無(通報番号を控えておく)
- 双方のけがの有無
伝えづらい状況(自分の過失が大きい、飲酒運転が疑われる状態、無免許等)であっても、保険会社には正直に全て伝えます。虚偽報告や重要事実の隠蔽は、告知義務違反として保険金支払拒否の直接原因になります。
6. STEP 5 の大原則:「その場で謝る」「現金で示談」が絶対 NG な理由
事故直後は動揺と罪悪感で「すみません、全部私が悪いです」と言ってしまいがちです。しかし、この一言が後で数百万円の損失につながることがあります。
その場での謝罪が危険な理由
- 過失割合の交渉で不利になる — 「全面的に非を認めた」と主張される
- 実際には相手にも過失がある場合が多い(直進車と右折車の事故は 8:2 が基本など)
- 過失割合は判例と実況見分から決まるべきもので、当事者間の「感情」で決めるものではない
現金で示談が絶対 NG な理由
- 相手が後日痛みを訴えて通院を始めると、示談金では到底カバーできない金額に膨れ上がる
- 相場を無視した金額で示談すると、後で保険会社が「示談済み」を理由に補償を拒否
- 領収書もない状態で相手が金銭を受け取ると、詐欺トラブルに発展することも
正しい言い方
謝罪の代わりに、「お怪我はありませんか。まず警察と保険会社を呼びますね」 と行動でフォローするのが正解です。責任の話は保険会社間で行います。
加害者側の心得
自分に明らかに過失がある場合でも、「相手の身を案じる姿勢」と「賠償責任の話」は完全に分けて対応します。前者は道義的に大切ですが、後者を口約束すると法的に不利になります。「治療費や修理代は、私の保険会社を通じて誠実に対応いたします」と伝えるだけで十分です。
7. STEP 5-①:通院・治療の記録を残す方法
軽微な事故でも、その日は問題なくても数日後にむち打ちや腰痛が出ることがあります。以下の記録を必ず残しておきましょう。

- 事故当日または翌日に整形外科を受診 — 期間が空くと「事故との因果関係」が争点になる
- 診断書は「約 2 週間の通院加療を要する」など明確な記載を医師に依頼
- 通院のたびに交通費(実費)を記録
- 仕事を休んだ日数・失った収入(源泉徴収票などで証明)
通院日数と慰謝料は比例します(自賠責基準で 1 日 4,300 円、任意保険基準・弁護士基準ではより高額)。「痛いけど我慢して通わない」は損失につながります。
8. STEP 5-②:示談交渉と弁護士費用特約の使い方
保険会社の示談担当者が交渉を代行してくれますが、被害者側になった場合は「保険会社の提示額 < 弁護士基準の金額」が一般的です。
弁護士費用特約とは
- 任意保険に月額 100〜200 円程度で付帯できるオプション
- 被害者側で弁護士に依頼するときの弁護士費用を、上限 300 万円程度まで保険会社が負担
- 加害者側の刑事弁護には使えない(あくまで民事の損害賠償請求における被害者側支援が主目的)
いつ使うと得か
- 相手保険会社の提示額に納得できない
- むち打ちで数か月通院しているのに慰謝料が数十万円しか提示されない
- 過失割合の交渉で押し切られている
弁護士基準(赤い本基準)で交渉すると、慰謝料が任意保険基準の 1.5〜3 倍になるケースが多く、費用特約があれば実質無料で依頼可能です。
9. STEP 5-③:事故後の任意保険等級と保険料への影響
事故で保険を使うと、翌年度から等級が下がり、保険料が数年間割高になります。
| 事故区分 | 等級ダウン | 割増期間 | 保険料への影響 |
|---|---|---|---|
| 3 等級ダウン事故 | -3 等級 | 3 年間「事故有係数」適用 | 年 3〜5 万円 割高 |
| 1 等級ダウン事故 | -1 等級 | 1 年間「事故有係数」適用 | 年 1〜2 万円 割高 |
| ノーカウント事故 | 変化なし | — | 影響なし |
保険を使わない判断ライン
修理費が 10〜15 万円程度なら、3 年間の保険料増額を計算して「自腹」の方が安く済むケースがあります。保険会社の担当者に「等級ダウンした場合の 3 年間の保険料増加額」を試算してもらいましょう。
10. よくある質問
よくある質問
Q.相手が「警察を呼ばないで」と言ってきたら?
Q.私有地(駐車場・自宅前)での事故も通報が必要?
Q.相手が「保険を使いたくない」と言ってきたら?
Q.事故現場から離れてから連絡してもいい?
Q.事故から数日経ってから警察に通報しても間に合う?
Q.相手が任意保険に入っていなかったら?
Q.自分の保険会社への連絡は誰がすればいい?
Q.目撃者がいない事故で相手と主張が食い違ったら?
Q.事故時に子どもが同乗していた場合の対応は?
Q.バイク事故の特殊な注意点は?
Q.駐車場に停めていた無人の車にぶつけたら?
Q.相手が自転車・歩行者だった場合の対応は?
Q.相手が外国人・英語話者だった場合は?
11. 緊急連絡先まとめ(印刷・保存推奨)
| 用途 | 番号 | 24 時間対応 |
|---|---|---|
| 救急・救助(負傷者がいる) | 119 | ○ |
| 警察(事故通報) | 110 | ○ |
| 救急相談(判断に迷う時) | #7119 | 実施地域・時間帯は自治体による |
| 事故車両のレッカー(JAF 会員) | #8139 または 0570-00-8139 | ○ |
| 事故車両のレッカー(非会員) | 契約保険会社の事故受付センター | 保険会社による |
| 交通事故証明書の申請 | 所在地の都道府県自動車安全運転センター | 平日日中 |
| 自分の任意保険会社 | (契約書・アプリに記載) | 24 時間受付が一般的 |
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事故が起きる前にこそ、任意保険と車検の期日を切らさないことが最重要
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出典・参考情報
- [1]e-Gov 法令検索「道路交通法(第 2 条 1 項 1 号・第 72 条・第 75 条の 11・第 117 条・第 119 条)」
- [2]e-Gov 法令検索「道路交通法施行令(第 27 条の 6)」
- [3]e-Gov 法令検索「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(第 2 条・第 5 条)」
- [4]警察庁「交通事故発生時の措置」
- [5]自動車安全運転センター「交通事故証明書の申請」
- [6]損害保険料率算出機構「自動車保険の概況(等級制度の解説)」
- [7]日本弁護士連合会「交通事故の慰謝料算定基準(赤い本)」
- [8]法務省「拘禁刑の創設」(2025-06-01 施行)
- [9]NEXCO 東日本「高速道路上での二次事故防止」
- [10]総務省消防庁「救急要請の判断基準・救急安心センター事業(#7119)」
- [11]JAF「ロードサービス出動理由・料金・短縮ダイヤル #8139」
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