バイクの法定点検は1年ごと|車検がなくても義務

250ccを超えるバイクの車検は2年ごとですが、法定点検は排気量にかかわらず1年ごとです。ただし義務があるのは125cc超の二輪で、原付は対象外。二輪専用の点検基準、年間1,500km以下なら省略できる項目、罰則がない代わりに待っている整備命令まで、道路運送車両法の条文で確認して整理しました。
1. 点検義務があるのは「125cc 超」のバイク
前回の記事で、車検が必要なのは 250cc を超えるバイクだけだと書きました。ここでよくある勘違いが、「車検がない=何もしなくていい」というものです。
これは違います。車検とは別に、法定点検(定期点検整備)の義務があります。
ただし、ここも正確に押さえておく必要があります。義務の根拠である道路運送車両法 第 48 条第 1 項は「自動車の使用者は…点検しなければならない」と書いています。そして同法 第 2 条第 2 項は、「自動車」を「次項に規定する原動機付自転車以外のもの」と定義しています[1]。
つまり、こういう線引きになります。
| 区分 | 総排気量 | 車検 | 法定点検 |
|---|---|---|---|
| 原動機付自転車(原付一種・二種)※ | 125cc 以下 | なし | 義務なし |
| 軽二輪=二輪の軽自動車(検査対象外軽自動車) | 125cc 超 250cc 以下 | なし | 1 年ごと |
| 小型二輪 | 250cc 超 | 2 年ごと | 1 年ごと |
※ 原動機付自転車の内訳は、施行規則 第 1 条第 2 項により 50cc 以下、または二輪で最高出力 4.0kW 以下の 125cc 以下(新基準原付)が第一種、50cc 超 125cc 以下で最高出力 4.0kW 超が第二種です[3]。ただし法定点検の話では、この第一種・第二種の別は関係ありません。どちらも「原動機付自転車」であって「自動車」ではないため、まとめて対象外になります。
車検がないのは 250cc 以下、法定点検の義務がないのは 125cc 以下。境目が違います。ここを混ぜると、軽二輪(126〜250cc)に乗っている人が「自分は何も義務がない」と誤解します。実際にはこの区分がいちばん、車検で強制されないのに点検義務だけがあるという状態に置かれています。
なお、原付に整備義務がまったくないという意味ではありません。道路交通法 第 62 条が「整備不良車両」の運転を禁じており、こちらは原付を含む「車両等」が対象です[4]。定期点検という形の義務がないだけです。
2. 周期は 1 年ごと、2 年に 1 度は項目が増える
法第 48 条第 1 項は自動車を 3 つに分け、それぞれ点検の周期を定めています[1]。
- 第 1 号(事業用自動車、車両総重量 8 トン以上の自家用など)… 3 か月ごと
- 第 2 号(自家用有償旅客運送、有償で貸し渡す自家用自動車など)… 6 か月ごと
- 第 3 号(前 2 号以外=一般の自家用)… 1 年ごと
自分のバイクを自分で使う限り、第 3 号にあたります。1 年ごとです。
技術的な中身は国土交通省令で定められていて、自動車点検基準 第 2 条第六号が、第 3 号の自動車のうち二輪自動車について別表第七(二輪自動車の定期点検基準)を指定しています。四輪の自家用乗用車が別表第六なので、二輪には専用の表が用意されているわけです[2]。

その別表第七を開くと、点検時期の欄が 2 つに分かれています。
1年ごと / 2年ごと(1年ごとの点検に次の点検を加えたもの)
毎年やる項目があり、2 年に 1 度はそこに項目が上乗せされる、という構造です。四輪でいう 12 か月点検と 24 か月点検の関係と同じ考え方だと思ってもらえれば近いです。
小型二輪の新車のように車検証の有効期間が 3 年の車両については、別表第七の注記に扱いが書かれています。「2 年目の点検は 1 年ごとの欄に掲げる基準によるものとし、3 年目の点検は 2 年ごとの欄に掲げる基準によるものとする」。初回車検のタイミングで重い方の点検が来る、という並びです[2]。
もうひとつ、条文の作りとして押さえておきたいことがあります。第 48 条第 2 項は、第 47 条の 2 第 3 項を準用しています。準用先を読むと「点検の結果、当該自動車が保安基準に適合しなくなるおそれがある状態又は適合しない状態にあるときは…必要な整備をしなければならない」[1]。
つまり、法定点検は「見て終わり」ではありません。見た結果に応じて整備するところまでが一つの義務です。「定期点検整備」という名前が示すとおりです。
ちなみにレンタルバイクのように有償で貸し渡す車両は第 2 号にあたり、別表第五の二という別の基準(6 か月ごと・12 か月ごと)が適用されます[2]。自分の一台の話とは周期が違うので、混同しないようにしてください。
3. 二輪にしかない点検項目
別表第七を四輪の別表第六と実際に並べて見比べてみました。以下に挙げる項目は、別表第六には一つも出てきません。専用の表が要るわけだ、と納得した部分です[2]。

チェーンとスプロケット
チェーン及びスプロケット 1 チェーンの緩み 2 スプロケットの取付状態及び摩耗
四輪の別表第六には存在しない項目です。ベルト駆動車のために「ドライブ・ベルト(摩耗及び損傷)」も別に用意されていて、これも二輪側だけにあります。
フロント・フォーク
フロント・フォーク ステアリング・ステムの軸受部のがた 1 損傷 2 ステアリング・ステムの取付状態
四輪のサスペンションとは構造が違うので、当然点検する場所も違います。
クラッチ・レバーの遊び
クラッチ クラッチ・レバーの遊び/作用
ブレーキも「ブレーキ・ペダル及びブレーキ・レバー」となっていて、手で操作する前提が条文に入っています。
このほか、かじ取り装置・制動装置・走行装置・緩衝装置・動力伝達装置・電気装置・原動機・排出ガス関係・エグゾーストパイプ及びマフラ・フレームと、装置ごとにひととおり定められています。
走行が少なければ省略できる項目がある
これは知っておくと得だと思います。別表第七の注記に、こう書かれています[2]。
(※1)印の点検は、自動車検査証の交付を受けた日又は当該点検を行つた日以降の走行距離が1年当たり1千5百キロメートル以下の自動車については、前回の当該点検を行うべきこととされる時期に当該点検を行わなかつた場合を除き、行わないことができる。
タイヤの状態、ブレーキ・パッドの摩耗、ホイール・ベアリングのがた、エア・クリーナ・エレメントの状態などが(※1)に該当します。年間 1,500km 以下、つまり月に 125km 程度しか乗らないバイクなら省ける、という規定です。
ただし条件が付いています。前回省略していた場合は省略できません。「行わなかつた場合を除き」という但し書きがそれです。2 年続けて飛ばすことはできない仕組みになっています。
もうひとつ、点火プラグの点検は「白金プラグ又はイリジウム・プラグの場合は、行わないことができる」とされています[2]。
4. 日常点検は「毎日」ではない
法定点検とは別に、日常点検(運行前点検)という制度もあります。ここも二輪で誤解されやすいところです。
法第 47 条の 2 第 1 項は、日常点検について「自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に」と定めています。毎日とは書かれていません[1]。
「1 日 1 回、その運行の開始前において」点検しなければならないのは、同条第 2 項が挙げる第 48 条第 1 項第 1 号および第 2 号の自動車、つまり事業用車両などです。一般の自家用は第 3 号なので、この毎日ルールの対象外です。
とはいえ、点検内容そのものは決まっています。自動車点検基準 第 1 条第二号により、別表第二(自家用乗用自動車等の日常点検基準)が適用されます。ブレーキの効き、タイヤの空気圧・亀裂・摩耗・溝の深さ、バッテリの液量、原動機のかかり具合、灯火装置の点灯具合、といった項目です[2]。
もっとも、この別表第二は四輪も含む共通の表なので、ウインド・ウォッシャやワイパーのように二輪には備わっていない装置の項目も並んでいます。付いていないものは点検のしようがありません。
5. 点検整備記録簿は車体に備え置く
見落とされがちなのが記録簿です。法第 49 条第 1 項は「自動車の使用者は、点検整備記録簿を当該自動車に備え置き、当該自動車について前条の規定により点検又は整備をしたときは、遅滞なく…記載しなければならない」と定めています[1]。
ここで除外されているのは小型特殊自動車だけです。検査対象外軽自動車(=軽二輪)も対象に含まれます。車検がないから記録簿も要らない、ということにはなりません。
保存期間は自動車点検基準 第 4 条第 2 項に定めがあり、二輪自動車を含む区分では2 年間です[2]。
記録するのは、点検の年月日、点検の結果、整備の概要、整備を完了した年月日、そして省令で定める事項(車台番号など、点検時の総走行距離、実施者の氏名・住所)です。
車載しにくい車両でも、条文は「備え置き」
ここは正直に書いておきます。スポーツタイプの二輪など収納がほとんどない車両で、紙の記録簿を常時積んでおくのは楽ではありません。
そして、この備え置き義務にも直接の罰則はありません。罰則を定めた第八章(第 106 条〜第 113 条)を通して見ても、第 49 条を引用している条文はありませんでした[1]。
ただし、罰則がないことと義務がないことは別です。条文は「当該自動車に備え置き」としており、そこに二輪の例外は置かれていません。本記事としては、条文が求めていない運用をおすすめすることはしません。
実務的な意味も残ります。後述するとおり、地方運輸局長が整備命令を出す場面では点検整備記録簿の有無と記載内容が確認されると条文に明記されています(法 第 54 条第 4 項)。車両側に記録がないことは、その場面で不利に働き得ます。
売却するときにも効いてきます。整備履歴が残っている車両とそうでない車両では、査定の説得力が変わります。
車検のない軽二輪でとくに難しいのは、記録簿そのものより次にいつ点検するかを覚えておくことのほうだと思います。車検という強制的なリマインダーがないからです。Garage mgr(ガレージマネージャー)に点検の実施日を登録しておけば、次の時期を期日として持てて、.ics でお使いのカレンダーに入れておけます。
6. 罰則はない。ただし何も起きないわけではない
正直に書きます。自家用車両の法定点検を怠ったこと自体を罰する規定は、道路運送車両法にありません。
罰則は第八章(第 106 条〜第 113 条)にまとまっています。たとえば第 108 条が挙げているのは第 4 条、第 58 条第 1 項の違反や、第 54 条第 2 項の処分違反などです。この章を通して見ても、第 48 条を引用している条文はありません[1]。
では放置してよいかというと、そうではありません。条文が用意しているのは、罰金ではなく段階的な行政の介入です。

| 段階 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| ① 整備命令 | 法 第 54 条第 1 項 | 保安基準に適合しない(おそれのある)状態のとき、地方運輸局長が整備を命じる。あわせて使用の方法や経路の制限を指示できる |
| ② 点検の勧告 | 法 第 54 条第 4 項 | 劣化・摩耗による不適合(別表第八)で、かつ点検が行われていないと判明したとき、点検と整備を勧告できる |
| ③ 使用停止 | 法 第 54 条第 2 項 | 命令・指示に従わず、なお不適合な状態のとき、自動車の使用を停止できる |
| ④ 罰則 | 法 第 108 条第 2 号 | ③の処分に違反した者は 6 月以下の拘禁刑または 30 万円以下の罰金 |
注目したいのは②です。整備命令を出す場面で、行政は点検整備記録簿の有無と記載内容を確認すると条文に明記されています。記録簿を付けていないことが、そこで表に出てくる仕組みです。
しかも勧告の引き金になる「点検」は、省令で具体的に指定されています。二輪の場合は別表第七の2 年ごとの点検(自動車点検基準 第 5 条第 2 項第六号)[2]。項目が多い方の点検です。
ここからは私見です。行政の話を抜きにしても、チェーンの緩みやブレーキパッドの摩耗は、二輪では転倒に直結しかねません。四輪なら「異音がする」で気づける段階が、二輪ではそのまま走行不能や転倒になり得ます。罰則があるかどうかを基準に決める話ではないと思います。
車検のある小型二輪なら 2 年に 1 度は強制的に見てもらえます。詳しくはバイクの車検は250cc超から|費用の内訳と有効期間にまとめました。四輪の 12 か月点検・24 か月点検との関係は24ヶ月点検と車検の違い、両方やる必要はある?が参考になります。
よくある質問
よくある質問
Q.250cc 以下のバイクにも法定点検の義務はありますか?
Q.原付には点検の義務がまったくないのですか?
Q.法定点検をしなかったら罰則はありますか?
Q.あまり乗らないバイクでも全項目を点検しないといけませんか?
Q.点検して不具合が見つかったら、整備までしないといけませんか?
Q.日常点検は毎日しなければいけませんか?
Q.点検整備記録簿は車検のないバイクにも必要ですか?
Q.新基準原付と原付二種で、点検義務に違いはありますか?
Q.二輪の点検項目は四輪と同じですか?
車検がないバイクほど、点検の時期は自分で管理するしかない
軽二輪には車検という強制的なリマインダーがありません。Garage mgr(ガレージマネージャー)に点検の実施日を登録しておけば、次の時期を .ics でお使いのカレンダーに入れておけます。無料・アカウント登録不要で、データはお使いの端末内にのみ保存されます。
出典・参考情報
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